劇団潮流 tayata-月の森にカミよ眠れ (2004年9月17日〜19日) 初演観劇録


「月の森にカミよ眠れ」が演劇になる?!そんなのムリでしょう!だって蛇は。あの泉は、森は。幻想的なシーンは。でもなるというのです。パンフレットの絵を描かせて頂きながら、なんとなくその舞台を想像できずにいました。

そして当日。…そうだった、最近演劇を見ていなかったなあと。象徴。空気の共有。そして役者の圧倒的な実在。そういった演劇にしかないもので、「月の森にカミよ眠れ」は「tayata」として舞台に現れたのでした。


会場に入ると、手が届きそうに近くシンプルな舞台に、1枚の背景が待っています。巨木のうちがわから覗く森。そこになぜか、きなりの衣装を着て体をほぐす役者さんたち。んん??しかし彼らはいつしか立ち上がり、獣の声を上げ始め。やがて語り部となり、この物語の縁起を語る。やがて語り部は衣装を身につけ登場人物となり、物語が始まる。不思議な導入部分でした。

さてさて、原作ではナガタチが呼ばれた所から始まるわけですが、ここではもっと前、アツカヤたちがエダチに向かう所から始まります。この演劇バージョンでは、より現代人に近いアツカヤたちの視点でこの世界に入っていく仕掛けになっているというわけです。

そして「米の国」に着くわけですが、あっとびっくりビートにのって「米人」の不気味なダンス。米人、というのは演劇オリジナルな設定で米の国の匿名な人々らしい。そしてナガタチ登場化け物退治。ナガタチ役の方、濃いめの男前です。「ナガタチのテーマ」があったりして…ナガタチも踊っちゃうんですよ!このあたりはギャグも交えて終始軽いノリで進むのであります。びっくり…でもそうなのだなあ、最初は親しみやすいノリでぐっと引き込む、定番といえば定番の展開だけど、終始シリアスに進む原作読んでるとやっぱびっくりしちゃいますね。で、気づいたら背景を飲み込めている、というわけであります。

そして場面は月の森。エダチからもどったアツカヤたちと、カミをほろぼすため呼ばれたナガタチがキシメと対面。キシメ、はきはきと話し、必死で村の長をやってきた女の子の雰囲気が出ています。
エダチからもどったタカシロ、アツカヤたちはカミを封じてアンタッチャブルな要の沼を切り開こうと提案。そこでナガタチが呼ばれ、不思議な力を披露します。不思議な力をどう披露したかは…ヒミツ〔笑

そしてナガタチとの語り、キシメの回想でのタヤタ、との出会いが演じられます。タヤタ!…褌(たふさぎ=ふんどし)ひとつじゃありませんでした。残念!(なにがや)背が高く大きいのですがどこかほわんとしたかんじのタヤタであります。ホオズキノヒメがその中で回想を語ります。

そして今。月の森に足を踏み入れたとき、、避けようのない悲劇がはじまり、必死に悩みたたかう彼らとともに運命が転がっていきます…。最後、観客である私たちに問いかけが投げかけられるまで。



限られた舞台のなかで、イメージを広げさせていく演劇。すぐそこに、キシメ、タヤタ、ナガタチと呼ばれこたえる人がいるという不思議さ。映画とはちがうおもしろさです。また、公演を重ねるごとに改良されバージョンを変えていく可能性があるのも演劇ならでは。私の見た一般上演のほか、高校などでの巡回上演があるそうです。機会があればぜひ、一生懸命キシメやほんわかタヤタ、かっこいいナガタチ、熱いアツカヤやタカシロたちに会ってみてください。

白井弓子


劇団潮流
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